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アンソロジー ∠ 雪ダルマ大作戦
雪ダルマ大作戦
Writing by 夢月 紫音
 学校から眺める外は雪が降っていた。
 視界が20mあるかないかの世界。
 俺は寒いのが苦手だ。
 こんな日は、家に帰るまで外に出ない方が懸命である。
 お昼休みに、何気なく外をみて見る。
 校庭の一角で何かを作っている様だった。

「ん?」

 あれは……、栞じゃないか!
 どんな事をしているのかと興味が沸き、観察を始めてみる。

「……、雪玉を作ってるみたいだな……」

 栞が作っていた雪玉は、雪だるまの部品らしく程なくして、雪だるまの胴体が完成したみたいだった。
 その雪だるまの胴体を適当な場所に持って行き、一つ頷いたと思うと、おもむろに雪だるまの顔部分の製作を始めた。
 そしてまた、雪玉が大きくなって行くのを見ながら俺は思う。
 俺の学校ってこんなに昼休み長かったかなぁー?
 そんなこんなで、暫くして雪だるまの頭が出来上がったのだった。

「……」

 胴体の部分で栞の頭ぐらいの大きさがある雪玉。
 そして胴体よりは小さいが、それでも栞の腰あたりまである雪玉。
 明らかに栞より大きい雪だるまになるのが分かる。
 まぁー、それはいい。
 しかし、あの頭となる雪球をちゃんと持てるのだろうか?
 雪玉は固まると重い。
 それなりの重量がある筈だ。
 そんな事を思いながら俺は、

「あれ、もてるのか……」

 と、口に出していた……。
 雪だるまを作っている栞本人は、会心の一作なのか、凄く満足そうに頷いている。
 そんな様子を見ながら、俺はボーっとしていた。
 栞は、頭を胴体の上に乗せる為、頭である雪玉に手をかける。
 ちょっと辛そうな感じだが、雪玉は浮き、そのまま胴体の一部に接触。
 一度持ち直すかと思いきや、胴体にぶつかった頭を胴体の上で転がして乗せる様だった。
 見ている感じは上手く行っている様だった。
 多分、栞もそう思っていたのだろう。
 あと少しと言うとこで栞が頭となる雪玉を持ちながらバランスを崩した。

「あ……、あぁ〜ぁ……」

 バランスを崩した栞は、重力には逆らえず、そのまま雪だるまと一緒に転ぶ。
 こっちまで、「ぷちっ」と可愛く聞こえて来そうだ。
 助けに行こうか迷っている所で、北川と香里が俺の側までやって来た。

「おーい、相沢、そんな所で何をやってんだ?」
「ん?北川に香里じゃないか。いや、あれ見てたんだ」
「あれって……栞じゃない!何やってんのよ、あの子……」
「どうやら、雪だるまを作ろうとして……」
「失敗したと……」

 俺の言葉を遮って、北川が話して来た。

「そう言う事。今から助けに行こうかなぁーとか思ってた訳ですよ……」
「なるほど」
「あの子は、本当にもう……、飽きれて何も言えないわ……」

 そう言って、頭を抱える香里。
 そのまま三人で様子を見ていたが、栞が雪から出てこない。
 そして、非情な事にお昼休みが終わると言う合図の呼び鈴が学校中に鳴り響く。

「出て来ないわね……」
「そうだな……」

 俺と香里の会話。
 そこに焦りながら北川が声をかけてくる。

「いや、二人とも助けに行かないの?」
「あのぐらいだったら、自力で抜け出せるだろう?」

 俺と北川の会話。
 そんな会話を繰り広げてても、栞は出てくる気配さえ無い。
 流石にちょっと心配になって来た俺たちは、栞を助ける事にした。

「まったく面倒ばかりかけるんだから……」

 香里は面倒そうな顔をしていても、これからの流れを既に考えていた。
 まぁー、口では色々言っているが、可愛い妹が心配なのだろう。
 香里は北川に職員室へ行く様に指示をする。
 授業に遅れる事は必至なので、その為の報告をするためだ。
 北川が職員室に行くのを見送って、俺と香里は校庭へ急ぐ。

「ちゃんと生きてるだろうなぁ〜……」
「不吉な事を言わない!!」
「へいへい……」

 校庭に向かいながら、呟いたら怒られた。
 まぁー、ともあれ何時もの平和な昼休みなのかもしれない……。

 追伸。
 雪の下敷きになっていた栞は、雪の重みから脱出が出来なかったらしく、一人でジタバタしてた事を此処に報告しておく……。


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