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√ 〜 ルート 〜
Writing by 夢月 紫音
仕事が忙しく、今日は久々の休みだ。「今日は天気がいい。」 『散歩がしたい。』そう思ったから、外に出た。 それが、まさかこんな出来事を体験するとは思っても見なかった。 … …… ……… なんとなく、表通りを歩いていた時の事。 誰かの視線を感じた。 振り向いたけど、そこには誰もいなかった。 気のせいだろうと思って、その時は何も気にしないで、歩き続けてた。 そして、また誰かの視線が俺に向いていた。 また、俺は振り向く。 「誰もいない」 ぼそっと言い放ち、そのまま進行方向へ向く。 「っ!?」 目の前には、俺がいた。 子供の時の俺がいた。 子供の俺は、にっこりと俺に微笑んだ。 「幻だ!」 自分に言い聞かせた。 自分は今を生きている。 こんな事があるわけがない! 一回目を瞑って天を仰ぐ。 目を開け、また前を見る。 いた。 子供の俺がやっぱり、目の前にいた。 微笑んでいる。 子供の俺は、今の俺に何かを伝えようとしていた。 自分の表情だ。見ればわかる。 子供の俺が、俺に手招いている。 「ついて来いと?」 子供の俺は、コクリと頷く。 「幻覚に惑わされて、死んだらあほだな」 そう思いもしたが、ついていく事にした。 子供の俺についていきながら、少年時代を思い出していた。 色々な事をして遊んだ事。 親に怒られたこと。 数えればきりがない。 子供の俺は、俺をどこに連れて行きたいのだろうか? 子供の俺は、昔住んでいた土地につれてきた。 「なつかしいなぁ〜」 子供の俺は、まだ歩いている。 連鎖反応的に俺も続く。 周りの景色はどれも懐かしいものばかり。 そんなことを思いながら、子供の俺は、ある山道に入って行った。 「なんだ、ここは?」 声に出して、言った。 子供の俺は手招きをするばかり。 「やっぱり、俺を殺すのか?」 子供の俺は、首を横に振る。 さらに、微笑みながら、 「忘れたの?未来の僕?」 不可思議な事を言った。 こんな山道に何があるのだろう? 子供の自分は、さらに歩き続けた。 何分歩いたろう。 日も傾きかけている時、子供の俺は眺めがいいところで、止まった。 「覚えてない?」 子供の俺が、俺に語りかけた。 子供の言葉に、そこから街を眺める。 今住んでいるところも一望できる場所だった。 「綺麗だな」 何気に声に出ていた。 「まだ、思い出せない?」 子供の俺は、語りかける。 「お母さんとの約束・・・」 「っっ!?」 思い出した。 確か、母が亡くなる前に、約束した事。 「自分が25の誕生日なったら、ここに来てひときわ大きい木の根元を掘り起こしなさい」 そんな事を言っていた。 子供の俺を見つめる。 子供の俺は、微笑んでいる。 忙しさに、あけくれて自分の誕生日を忘れていた。 遺言通り、木の根元を掘り起こした。 何分かして、一通の手紙が見つかった。 母からの手紙だった。 25歳になった自分への手紙だった。 手紙の中身は、今の自分を見透かしたかのような内容だった。 素直に自分は涙した。 そういえば、こんな感情、すでに忘れていたな・・・ 気持ちが落ち着いたとこで、子供の俺をみた。 立っていたはずの場所に、子供の俺はいなかった。 辺りを探したが、いなかった。 そして、さっきの場所に戻り、日は隠れて、暗い夜なになっていた。 そこから、見る夜景は綺麗だった。 子供の俺は、きっと忘れてしまったこの気持ちと、大事なものを俺に教えようとしていたのだな。 この気持ちを忘れてしまったら、一人前の大人とはいえない。 子供の俺は、この気持ちを甦らせてくれた。 大事なものを届けてくれた。 「ありがとう」 忘れてしまった気持ちと、大事なものを胸に抱えて、その日は終わったのだった。 ……… …… … |
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