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オリジナル ∠ 月夜に望む夢


◇ 月夜に望む夢
作・編曲 :: チップ / 童話 :: 夢月 紫音
©チップ / 幽楽幻奏団


月夜に望む夢
Writing by 夢月 紫音
 これは少し悲しい物語。
 ある所に小さな子鳥の親子がいました。
 親子は楽しく毎日を過ごしていました。
 それは、それは、ほかの鳥の親子達が嫉妬するくらいの仲の良さでした。
 いつも笑顔が消えない、絶え間ない家族の絆。
 小鳥はお母さんが大好きで、いつも笑顔でした。
 ある日、お母さんが急に姿を消してしまいます。
 一人になった子鳥は、毎日泣いていました。

「おかあさぁん。おかあさぁん、どこにいったの?」

 子鳥は泣き止みません。
 すっかり涙も枯れ果てた頃、ある親鳥がいいました。

「あなたは、大好きなお母さんがいないままでいいの?」

 その親鳥は、次の言葉もなく子鳥の側を離れていきました。
 子鳥は考えました。
 雨が降っても、嵐がきても、お母さんを待ちながら、考えて考え抜きました。
 そして、1つの結論に達したのです。

 泣き続けるだけじゃ意味がない!
 探そう!!

 子鳥は決心し、お母さんを探す旅にでました。
 その日の夜、綺麗な満月が出ていました。
 子鳥は満月に向かって羽を翔ばたかせ、夜空に飛び出して行きました。
 子鳥は何があっても負けませんでした。
 お母さんを探す思いを秘め、その小さな翼を翔ばたかさせました。
 幾日が過ぎ、子鳥は木の側で止まっていました。
 小さな翼は痛々しく傷つき、体は痩せ細っていました。
 しかし、小鳥は頑張って、羽を翔たかさせます。
 思いとは裏腹に、思う様に体は動いてくれません。
 だんだんと、翼は勢いをなくし、とうとう、翼を広げられなくなってしまいます。
 子鳥は大地に横になり、泣かないと決めた涙が出て来ました。

「おかあさぁん。ごめんね・・・」

 子鳥は小さくつぶやき、最後の涙を流しました。
 しかし、子鳥の顔は何かをやり遂げた顔つきでした。
 子鳥が命を落としたあと、雨が降りました。
 子鳥の命の終わりを嘆く様に、強い雨が降りました。
 雨が止んだ時、雲の隙間から、月の光が子鳥に向かって下りてきました。
 その光は、子鳥の思いの道しるべとなり、子鳥を誘いました。
 その先には、親鳥が子鳥を待っていました。
 子鳥に笑顔が戻り、親鳥と空を大きく回っています。
 いつも笑顔が消えない、絶え間ない家族の絆。
 それが戻った瞬間でした。
 親子は空を回りながら、いつまでも、いつまでも、夜空の満月に向かって飛び続けました……。


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